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Colors 【vol.4】 「驚いたな。今の一撃で倒せると思ってたんだが」 気絶したプテラをボールに戻しながら、ワタルが呟く。 これでニ対一になったわけだけど、エーフィは次の一撃でやられる。実質一対一だ。それに――。 「ごめんな、エーフィ。休んでてくれ」 もう倒れそうなほど弱っているエーフィをボールに戻す。彼女がここまで傷ついてしまったのは、僕の判断ミスが原因だ。 勝利のために、トレーナーである僕のために、彼女がこれ以上戦う必要はない。 ボールに収まるために身体が粒子に変換される瞬間、エーフィが驚いた顔をしていた。 これはあとでお説教をくらうかもしれないな。もう何度議論を交わしたか分からない、トレーナーとしての在り方について。 「ますます厳しい戦いになったけど頼めるかな、ブラッキー?」 「主がお望みとあらば。しかし先程の報酬では割に合わないので、ウィスキーも追加で」 僕の我侭に、ニヒルに笑って答えるブラッキー。下戸なのに酒好きなのは相変わらずか。 「OK、マッカランを開けるよ。ただし僕も飲むからね」 「ではそれを勝利の美酒とするために、私も頑張らせてもらいます」 今度は綺麗に笑ってから、ブラッキーはフィールドに佇むカイリューを見据える。 ブラッキーはそのタフネスを活かし、“毒々”で相手をジワジワと追い詰める戦法を得意としている。 カイリューの攻撃力をもってしても、ブラッキーは二発以上耐えられる筈だ。“毒々”がきまれば、こちらの勝率は格段に上がる。 「それが紳士ってやつかい? 俺には理解できないな」 エーフィを戻し、ブラッキーを向かわせたことを言っているんだろう。ワタルは腕を組みながらそう呟いた。 「紳士とかは関係なくて、自分のケツくらい自分で拭くってことだよ」 「そうか。……君は俺が思っていた以上に面白いやつだな」 「……? 男として当たり前のことを言っただけだけど」 僕が思っていることを素直に言うと、なぜかワタルは腕を組んだまま大笑いを始めた。 僕の台詞がツボに入ったのか、あるいは強者の余裕か。もしくはその両方かもしれない。 笑っている姿は僕やマサキと同じ二十五歳の青年そのもので、さっきまでの四天王大将としてのカリスマはどこにもなかった。 ワタルはひとしきり笑ったあと、腕組みを解いて一流トレーナーの顔を取り戻す。 「さて。そろそろ時間稼ぎはいいだろう?」 なんでもお見通しってことか。ワタルと喋っている間に時刻は昼を指している。これで“月の光”の回復量が朝よりマシになった。 “毒々”以外に強力な攻撃手段を持たないブラッキーにとって、それは戦闘の大きな助けになる。 「知っててのったワタルは性格が悪いと思うけどね」 「よく言われるよ。……まぁ、フェアプレイの精神ってことにしといてくれ」 そう言ってワタルは大仰に肩をすくめる。案外エーフィを僕が戦闘不能扱いにしたことを、借りとでも考えていたのかもしれない。 「じゃあ二回戦といこうか」 「望むところさ」 僕とワタルのやり取りから、フィールドに緊張感がよみがえる。 カイリューはその総身に力を漲らせ、どのような攻撃でも全力で行えるように。 反対にブラッキーは力を抜いて瞳を閉じ、“毒々”を初手できめられるように集中を。 「カイリュー、十万ボルトだ」 ワタルの指示が飛び、カイリューが両手を帯電させる。タイプ一致のドラゴンタイプの技でくるかと思っていたが、“十万ボルト”とは意外だ。 ……いや、そうでもないか。古来より、雷は神性と結びつくことが多い。 ギリシャ神話のゼウスや北欧神話のトール、バラモン教のインドラなんかが有名だろう。 竜もまた神にもっとも近い生物として崇められることもしばしばで、そのせいか萌えもんのドラゴンタイプは電気属性の技を扱いやすい。 そうしてカイリューの両手から、目を焼くような眩い稲妻が放たれる。 ブラッキーは回避運動をとろうとするが、相手は光のそれ。タフネスを得るためにスピードを犠牲にしたブラッキーには、絶望的な差だった。 「ぐぁぁ、うぅ」 文字通り“十万ボルト”が身を焼き、片膝をつくブラッキー。だけど、まだ体力は三分の一程しか削られていない。 今のが最強の技というわけではないだろうけど、これで“毒々”が入れば充分に勝機は見える。 「頑張れ、ブラッキー。“毒々”だ」 「うぅぅ、あぁ」 しかしブラッキーは体を痙攣させながら呻くばかり。 ――まさか。 「……はぁ、はぁ。すみま、せん、主。どう、やら、麻痺をもら、ったよう、です」 荒い息をつきながらの返答は、希望を潰えさせるに充分なものだった。 ブラッキーの特性は“シンクロ”。自分が受けた毒・麻痺・火傷の状態異常を、相手にも受けさせるもの。 相手のカイリューを見やれば、ブラッキーと同じく片膝をついている。時々体を痙攣させていることから、相手も麻痺状態だということは分かる。 そして、それは最悪の状況だった。状態異常にかかった者に、別の状態異常をかけることは出来ない。 つまり“毒々”は封じられ、カイリューに勝てる可能性が一番高い方法を失ってしまったことになる。 「肉を切らせて骨を断つ、か。やられたよ」 「麻痺が発動するかは運だった。……俺もまだ女神に見放されていないらしい」 ここは幸運の女神に微笑まれ続けるワタルを賞賛すべきか、そっぽを向かれ続ける僕を卑下すればいいのか。 運も実力の内とは月並みな表現だけど、実際そうなのかもしれない。 ブラッキーはダメージを受け、ほぼ唯一の牙を折られた。対してカイリューは、麻痺は受けたもののノーダメージ。 その差は歴然だった。 「だけど、まだだ」 そう、まだブラッキーは戦える。その瞳には、戦意がまだ燃えている。 エーフィを下げたことが僕の我侭なら、ここでブラッキーを戦わせることも僕の我侭だ。 「本当に自己中心的ですね、主は」 痺れる体に鞭打って、立ち上がるブラッキー。 「ごめんな、迷惑ばかりかける」 拳に悪タイプのエネルギーを纏わせて、ファイティングポーズ。 “騙まし討ち”――気配を殺して相手に近づき、死角から攻撃をくらわせる必中の技。それがブラッキーに残された、唯一の牙だった。 「いいえ。これも貴方の臣下なればこそ。他の誰にも、この役目は渡せません」 疾走するブラッキー。カイリューは麻痺で動けず、その身に殴打の嵐を受ける。 「やはり堅いですね。傷を負わせた気がしません」 「これでも神聖なドラゴンなんでね。そんな破壊力じゃこの身は打倒できないよ」 不適に笑うカイリュー。事実、あと五回ほどブラッキーが仕掛けないと彼女は倒せない。 正に薄氷を踏むような展開になった。麻痺での行動不能と、こちらの回復のタイミング。読みきれなければ、即敗北に繋がる。 「くぅぅ」 「ちぃっ」 次のターン、両者共に麻痺で行動不能。このターンは流れて、攻撃は次の機会に。 「……もういいだろう。楽にしてやれ、カイリュー。“逆鱗”だ」 そうして、薄氷はあっさりと踏み砕かれる。ワタルが指示を出した技は、ドラゴンタイプの中でも随一の破壊力を誇るものだった。 逆鱗とは、竜の顎の下に一枚だけ逆さに生えているとされる鱗のことをいう。 竜は本来人間に危害を加えることはないが、その逆鱗に触れられることを非常に嫌うため、これに触れた場合には激昂し、触れた者を即座に殺すとされた。 ここから転じ、萌えもんの“逆鱗”は、その者が持つ怒りのエネルギーを破壊力として増幅し、暴れまわるという大技のことを指す。 今まで麻痺だなんだと充分にその力を発揮できなかったカイリューにとって、正にそれはうってつけの技だった。 「ブラッキー、すまない……」 トレーナーとして、敗北の瞬間から目をそらすことは出来ない。 僕が瞳を閉じる前に見た光景は、ブラッキーがカイリューの豪腕を受け、ゴム鞠のように吹き飛ばされるものだった。 「――と、このようなことがありまして」 ここはセキエイ高原付属病院の、とある一室。 ここにいる人物が、病人なのか迎賓なのかよく判らなくなるほど豪華な部屋だ。そこのベット脇の椅子に、僕は腰掛けている。 「早々にワタルの坊やとやり合うとは、ご苦労だったじゃないか、ジャン」 骨折した足を吊るし、しかしその覇気は小揺るぎもしない病室の主。 普通の病人服ではなく、上等なシルクで作られたローブを身に纏っているのは、何を隠そう僕の祖母、四天王のキクコ婆様だ。 「まぁ結果は引き分けということで、試練には合格したようです。これからよろしく頼むと言われました」 バトルが終わると、ワタルは会話もそこそこに颯爽と部屋を出て行ってしまった。 いま冷静になって考えると、ただ暇だったからバトルがしたかっただけなのかもしれない。最後の“逆鱗”にも、そんな鬱憤が込められていたようにも思えるし。 僕はリーグ休業状態による、思わぬ被害を受けてしまったのかも。 「ワタルらしいね。……あぁ、お前の萌えもんたちは?」 「先に宿舎に行かせました。エーフィとブラッキーはセンターで回復しましたが、念のために他の三人も付けてあります」 「そうかい。久しぶりに会いたかったけど、またの機会にするよ」 僕の答えに、少し寂しそうな顔をしたキクコ婆様。なんだかんだ言って、キクコ婆様は僕の手持ちの皆によくしてくれている。 初めて顔見せしたときには、なぜゴーストタイプがいないのかと憤慨してたけど。 「はい。また皆を連れてお見舞いに来ます。……それで、お体のほうはいかがですか?」 なし崩し的にワタルとのバトルについて話していたけど、本来はこれが目的だ。 「そうだねぇ……。全治三ヶ月と医者は言ってたよ。だからその間、私の代わりに四天王を頼む」 全くもって間抜けなことに、僕は代理四天王をする期間について知らずにここまで来てしまっていたのだ。 余裕をもって、大学を半年休学してきてよかった。 「分かりました。不肖の身ですが、その大任を務めさせていただきます」 姿勢を正してそう言った僕に、キクコ婆様は満足そうに頷く。 そして、サイドテーブルに置いてあった何かを僕に差し出した。 「これは……!」 菱形の銀の台座に、それに合わせてカットされた四角錐の水晶がはめ込まれたバッジ。 この地の由来である石英の、純粋な結晶体がはめ込まれたそれは、間違いなく四天王の――。 「そう。四天王のバッジさ。これで誰も文句の付けようがない、四天王の誕生さね」 震える手でバッジを受け取る。本来軽いはずのそれは、込められた想いゆえか重い。 どうしようもなく震える手をどうにか制してバッジを胸につけて、キクコ婆様に向き直る。 「いいかい、その四角錐の底辺にある四つの角は、私ら四天王を表している。頂点は言うまでもなくチャンピオンだ。 私らはチャンピオンを支える四天王。それを忘れずに、頑張りな」 「――はい!」 このバッジに相応しい覚悟が僕にあるのか、まだ分からない。 でもようやくここに、代理四天王としての僕が生まれ落ちた。
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+++ 明かりを灯して +++ 「おっかえりー!」 と、嬉々とした元気な声で出迎えてくれたのはヒトモシだ。 いつもの白髪、いつもの笑顔なのだが、その身体はいつもの可愛らしい服装とは違っていた。 彼女はシーツ一枚で身を包んで、更にやたらと長い赤リボンでぐるぐるとその周りを巻いている。 シーツは肩までしっかり巻けておらず、少しはだけているのだが、彼女はそのことに気付いていない。 その肩が肌色で、それぞれ白く細い紐が掛かっているだけなところを見るに、シーツの中は下着姿のようである。 クリスマス。 そう、今日はクリスマス。だから気持ちはわかるのだけど……。 どうしてこうなった。僕はそんな疑念に溢れていた。 「えと、ヒトモシ……?」 「今日はクリスマスだよっ!」 「そ、そうだけど」 どういうこと? と口をポカンと開けた表情で問うて見ると、 えっへへー、と彼女は極上の笑顔ではにかみ、 「わたしをプレゼントっ!」 なんて衝撃的な言葉を放ってのけた。 あまりの衝撃に思考は止まり、あまりの可愛さに理性が飛びかける。 下着にシーツ、なんてシチュエーションも相俟ってよからぬ方へと流れ始める思考をなんとか修正して、 なんとか冷静を保って微笑みで応える。 「あ、ありがとう。嬉しいなッ」 ……若干引き攣ってたかも。 そんな僕の態度に彼女は少し首を傾げながらも、すぐに切り替えて笑顔になる。 「それでそれで、ケーキはー?」 「お、おう。ちゃんと買ってきたぞ」 特にサプライズを計画していたわけではなく、楽しみにしてろよーとも言ってあるので隠す必要もない。 ちょっと奮発して買ってきたホールケーキをテーブルの上に置いて、箱から取り出す。 ……二人じゃ食べきれないだろうな。 なんて考えながら包丁を取りに行こうと席を立ったのだが、 くんっ、とヒトモシに裾を引かれて止められた。 「ん、どした?」 「ねー、ちょっと待っててー」 子供のようなはしゃぎようでそう言って、とことことテーブルの向こう側へと回る。 ケーキを挟んで僕の反対側で対面。身を乗り出してケーキに顔を近づけて、 「はいっ、どーぞ!」 と、その頭にポッと小さな火を灯す。 ヒトモシならではの蝋燭の火、なのだが、 クリスマスに蝋燭……? 「えーと……?」 「さ、一息で一息で!」 なにやら彼女は勘違いをしているようだ。 目を閉じてキャーっとはしゃいでる彼女には申し訳ないと思いつつ、間違いを指摘することにする。 「それは……誕生日にやるもんじゃない?」 「えッ!?」 この世の終わりが訪れたかのような、衝撃の顔。 わなわながくがくと彼女の身体は震え、顔はみるみる真っ青になっていく。 毎度毎度大袈裟だとは思うが、このコロコロ大きく変わる表情に飽きない僕であった。 「で、でもだって! 前の時はマスター、蝋燭立ててくれたはずなのにッ」 「うん、ヒトモシの誕生日だったからね」 「そんな……っ」 しかし拒絶する理由もない。せっかくの好意に甘えようかと考えたところで、 あ、と僕は一つ閃いた。 「そうだ、ちょっとそのままでいて」 「?」 すぐに表情を怪訝のそれへと移す彼女をそのまま待たせて、僕は近くの引き出しを開ける。 少し汚く整理の行き届いていない引き出しをゴソゴソと漁って、それを取り出した。 明かりを消して、それを彼女の方へと向けて、 「ほらっ、笑顔笑顔!」 「えっ、あっ。いえー!」 鳴った音はピピッ、という電子音。 僕が取り出してきたのはデジタルカメラだ。 「なになに?」 「クリスマスはね、蝋燭を吹き消すことはしないけど、 蝋燭で飾り付けをすることはあるんだよ」 ほら、クリスマスキャンドル。 そう言いながら撮ったばかりの写真を見せて、褒めてあげる。 「ね、綺麗でしょ?」 その小さな画面の中には、 火を灯した彼女の笑顔と、光で輝くクリスマスケーキ。 わっ、という声を漏らした彼女の目は、その写真と同じくらいに輝かせていた。 どうやら喜んでくれたようである。 「それじゃ、プレゼントターイム!」 さらに喜びの追い討ちをかけるように、なんだなんだと呆けている彼女の目の前に一つの袋を差し出す。 手のひらに乗るくらいの白い紙袋に、小さな赤いリボンをあしらった簡素なものだったが、 中身の方には自信があった。 「えっ、えっ?」 「ほら、開けてみて」 ガサゴソ、と探る彼女が袋から取り出したもの。 それは子供用のオモチャの指輪。なのだが、 装飾には、小さな小さな闇の石をあしらっている。 いつか彼女が大きくなって、ランプラーに進化して、 もっと成長した頃に役に立つ、奇跡の石。 「……なんか汚い」 「はは、そんなこと言わないでよ」 今はまだ彼女には価値のわからないものだろうけど。 今はまだ彼女には伝わらない気持ちだろうけど。 ――君が美しいシャンデラになるまで、僕はずっと傍にいる―― ――そして君に、ずっとずっと傍にいて欲しい―― そんな想いを込めた、プレゼントだ。 「ね、ヒトモシ」 「んー?」 なんだかんだ言いながら、彼女ははめてあげた指輪を嬉しそうに眺めている。 それを見て、思わず僕も顔が綻ぶのだった。 「メリークリスマス」 「メリぃクリスマスっ!」 ~~~ 僕が話しかければ、彼女は嬉しそうに応えてくれる。 僕が笑いかければ、彼女は最高の笑顔で応えてくれる。 僕の心は、彼女の灯した明かりで照らされている。 零ですーっ。 今年のクリスマスSS第一弾! 新作黒白さんからヒトモシさん。 ご周知の通り(なのか?)、霊好きな私はシャンデラさんにずっきゅんきたわけで、 こうなるのも時間の問題だったのだ……。 では、こんな拙作を読んでくださった方々に感謝をしつつ、このあたりでー。
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少女は青年と対峙する。 少女は何を思い、青年は何を感じるのか。 その行く先は、誰にもわからない。 その行く末は、神ノミゾ知ル。 「エアちゃん!飛んで!クラゲちゃんは向こうの相手を!」 「まかせろっ!」「…ん。」 触手を操り、ハクリューを追い詰めるドククラゲ。 四方八方から迫る触手に対し、防戦一方のハクリュー。 上空に飛んだエアームドの方も気に掛けつつ、触手を避けていくが、それも一時。 手馴れた様子で操られる触手は、突破口を見出そうとするハクリューに対し、的確にいやらしいところを狙って操られているのだ。 流石にハクリューも上空へも警戒するのは容易い事ではなくなってくる。 もちろん、他にマグカルゴ、リーシャンにも気を回さねばならないのだ。 「…ッ!」 瞬間、ハクリューは迫る触手に捕らえられて、しかしその姿はフッと消える。 ドククラゲは直ぐに状況を理解し、青年の方へと視線を送る。 その眼光の先の青年の隣に、ハクリュー。 “こうそくいどう”である。 「…ご主人様…!」 「悪いな、むぅちゃんには子守頼んであるから、たぶんこれない」 青年とハクリューにとって、非常に辛い状況である。 相手は強い、そして総員で掛かってくる、それに対し、青年側は一人。 「…でも、やるしかないですよね…」 「…ハクリュー、“10万ボルト”」 青年が、『愛称』でなく『種族名』でハクリューを呼ぶ、本気の証。 そう呼ばれるだけでここまで気が引き締まるのはなんでかな、一瞬、ハクリューはそう考えて、しかし直ぐに止めた。 全神経をドククラゲへと集中させ、放つ稲妻は一直線、ドククラゲへと飛ぶ。 「リーちゃん!」「うんっ!」 上空から落とされる光り輝く壁。 それがハクリューの電撃を遮る。 「…っ。」 それはすべてを遮れてはおらず、ドククラゲにも多少のダメージが入る。 しかし、それがなければ水に電気は致命傷。 リーシャンのナイスサポートである。 「ふぅ、あぶなかったぁ……」 「リーちゃんナイスよっ!エアちゃん!あいつのうしろにいって!」 「ああ!」 旋回しつつ、ハクリューの後ろに回る少女達。 そこに放られる一つのボール。 「マグちゃん!“ねっぷう”!クラゲちゃんは“バリアー”!」 刹那吹き荒れる灼熱の風。 それはハクリューだけをつつみ、ドククラゲは“バリアー”で身を守る。 「ハク――」 青年は表情に翳りを見せるが、それも一瞬。 こんなことではやられるはずもないハクリューに、次の指示を出してやらねばならない。 それぞれがバラバラの位置にいるのならば、広範囲に効果が及ぶ攻撃を放てばいい。 「ハクリューっ!!」 これから命ずる攻撃のその効果範囲外まで走って逃げつつ、青年は叫ぶ。 「“たつまき”っ!!」 ごぉっ、という轟音と共に、強風が渦巻いた。 もちろん青年の推測に違わず、その効果範囲は青年の近くにありつつも影響の無い範囲。 威力の弱い、下位技ではあるが、ハクリューの力で起こされた強力なそれは、マグカルゴの熱風を巻き込み、更なる威力を増す。 上空のエアームドにとっては少々痛い、彼女らを撹乱させるには十分すぎる威力。 「あつっ!あっつぅい!」 「主、我慢しろ。わたしだって熱い。」 「溶けさせたの失敗かしらねぇ?」 「その所為で余計に熱いのは事実だな。」 マグカルゴに与えた指示は2つ。 一つはボールから出た後、熱風を放つこと。もう一つはその後、“とける”を使い熱で相手を撹乱すること。 おかげで、傍目にはドククラゲとハクリューの1対1になっている。 「エアちゃん、ダメージはだいじょーぶ?」 「ああ、之位ならなんとか、な。」 「いちおうこれオボンのみね。食べたら下に特攻よろしく。」 「きついね主は。了解だ。」 ジリジリと熱が体の水分を奪っていく。 そこにいる全員が水を欲しがっているであろう。 しかしその中で。ドククラゲだけは汗をかいていない。 予め“冷凍ビーム”で自らの体の表面を凍らせているので、水分を失っていないのだ。それでもほぼ一瞬だが。 しかし一瞬があれば十分。その体の触手が鋭く動き、ハクリューの体を押さえつける! 「…もらったよ。私達の…」 「勝ちだ!“ドリルくちばし”!」 速度によりさらに鋭さを増す嘴(状に回転した刀を持ったエアームド)がハクリューへと突き刺さる――と思われたが、しかし寸前でピタリと止まった。 そして、その直後に発せられた声は、この場の誰のものでもない声。 「……“サイコキネシス”」 その声に、青年とハクリューだけが状況を理解した。 未だ理解できずに気を取られているドククラゲの隙をついて、ハクリューは触手から脱出。青年の隣へと戻る。 「なにやってんでしか、まったく」 「むぅちゃん、助かったよ」 声の正体、青年の手持ちの一人、ムウマージ。 言葉にも態度にも呆れを表し、溜息をついて“サイコキネシス”を解く。 「………あらー……」 着地した少女の目に飛び込んだのは、溶けっぱなしのままダウンのマグカルゴと、刀が地面に刺さっているエアームド、げんかい切り切りのドククラゲ。 状態的に負けを認めざるを得なかった少女とリーシャンは降参のポーズをとる。 「あーもう!まけまけ!わたしたちのまけよー!うちにつれてくなりすきにすればいーでしょー!」 「いや…連れて行くとかじゃなくてね…」 あーだこーだわがままを言い、逃げる隙をうかがう少女。 それに困っているような青年。 「あー…このうるさいのどうするでしか、マスタースパークで焼き払うでしか。」 「それはダメだけど…そうだ!」 青年は名案とばかりに少女に提案を持ちかける。 「よかったらだけど…後でちょっとしたパーティやるんだ。よかったら君たちも来ない?」 「「「……はぁ?!」」」 ※ ※ ※ 萌えもんセンターのとある一室。 子ども組みと料理できない組みが料理待ちをしている。 が、微妙に空気は悪く、ちょっぴりギスギスしている。 「………」 「………」 こたつに入っているマスター二人、少女の後ろに立っているのはドククラゲ。 子ども組み(エネコ、リーシャン、ワタッコ)はテレビに夢中。アニメでもやっているのだろうか。 ムウマージは影の中で休憩。エアームドは扉の前でガードマンの役であろうか。 初めて会う二人なのでこれといった話題もなく(青年が耐えきれず『ご、ご趣味は?!』とかいって場が凍ってるのもある)かれこれ1時間近くはこの状態である。 一方の料理組みは料理という共通項かすぐに打ち解け、どんどん材料を切り、鍋の味付けをしたりしている。 「御出汁はいい感じになりましたよー。」 「こっちも材料は全部切りましたー。」 「じゃあ向こうに運びましょうか。」 「えぇ。」 鍋が完成し、いよいよ鍋パーティーが始まろうとしていた…。 「よーし、じゃあやるか。」 全員で囲むコタツの上に準備も整い、青年の声と共にパーティーが開始された。 本来は青年達の、エネコの歓迎会のはずだったのだが、もはや通夜に近い気まずさである。 とりあえずと、青年は適当に肉・野菜などを適当に鷲掴みにして、鍋の中へと入れようとする。 その時である、 「ちょっと待ってください!」 グツグツとしか音を立ててなかったその部屋に、ハクリューの声が響いた。 全員の視線がハクリューへと集中する。 「何やってるんですか! 肉は最後に決まってるじゃないですか!」 ハクリューは青年の持っていた材料を引ったくりながら叫び、手馴れた様子で白菜から鍋へと入れていく。 「最初は野菜からだって、何度も言ってるじゃないですか!」 「あーもー、食えればいいんだよ。ねぇ?」 青年は何度も聞かされてる話にうんざりしながら、同じように呆れ顔をしていた少女に話を振ってみる。 「まぁ…ねぇ…」 予想外にも、青年と意見が合った。 やっと話が通じるようになったかなと青年はホッとしたが、しかしその理由は別なものであった。 ハクリューの鍋奉行具合を見ていたマグガルゴもまた、叫びだしたのだ。 「ちょっとまったぁぁぁぁぁぁ!」 先程と同じように、今度はマグカルゴへと視線が集まる。 「白滝の側にお肉を入れちゃいけませんっ!」 その怒声は、ハクリューへのダメ出し。 そのダメ出しを受けて、ハクリューは『なんだってー!?』、と雷が落ちたような衝撃を受けていた。 そう、マグカルゴは、鍋奉行のハクリューを超えた奉行なのだ。 「将軍だ……、将軍がいる……」 青年がポツリと呟く。 その呟きを聞いて、少女はやれやれと呆れ顔。 お互い苦労してるんだなと、少し仲良くできそうな気が湧いた青年であった。 「そういえばさ。」 鍋もあらかた食べ終わり、エネコを猫じゃらし状のおもちゃであやしていた少女が青年に話しかける。 「ん?なんだ?」 「この子のニックネームは?」 「ニックネーム?」 「ほら、ハクちゃんとかむぅちゃんってニックネームでしょ?この子のは何かなと思って。」 「あぁ、これからつけるんだよ。今日捕まえたばかりだからさ。じゃ今考えるか……」 5分ほど悩むもなかなかいい案が出ず、ついには少女一行までもが名前案をだしていた。 (※ ここからセリフオンリーになるのでセリフ前に名前が入ります。) 少女「エネちゃん!」 青年「いや、安直過ぎやしないか?」 ハク「エネちゃん可愛いじゃないですか!」 青年「ハクと考えてたのか!」 マグ「じゃあネコちゃんではどうでしょう?」 青年「見たまんまじゃねぇか!」 むぅ「ちぇん!」 青年「あにゃぁぁぁん!」 リー「と○ほうかっ」 青年「突っ込まれた!」 わた「わたぽんはねー、えーっとー、えーっとー」 青年「いや、考えてないなら無理に言わなくていいぞ?」 少女「エコちゃん!」 青年「環境に優しそうだなぁ!」 ハク「エコちゃん可愛いじゃないですか!」 青年「お前実はなんでもいいだろ!」 マグ「どらえ……いえなんでもないです。」 青年「ネコ型だけども!」 むぅ「おりんりんランド!はっじまるでしー!」 青年「もうそっちのネタはいいよ!」 リー「ムラサメライガー!」 青年「ネタがわかりづらい!」 わた「えーっとー…えーっとー…」 青年「だからな、無理はしなくていいんだぞ?」 エアームド「埒が明かんな。」 その一言でその場が収まる。 「だいたい主達よ、まじめに考える気はなかっただろう?」 「…あら、ばれてた?」 「………いいかげんにしてくれよ……」 青年が疲れたといわんばかりに座りこむ。 ふと見上げると、ドククラゲが何か考え込んでいた。 少女もそれに気づき、話をそちらに振る。 「クラゲちゃん?何か思いついたの?」 「…エネっち…いや、なんでm」 「そ れ だ。」 かくして、エネコのニックネームが決まった。 『エネっち』。青年一行の、新たな仲間の新たなスタート。 起こる拍手、照れるエネコ。なんとも暖かい空気である。 青年と少女、それぞれの一行も、お互い仲良くやっていけそうだ、そう思った。 そして、それでは最後の締めと、青年が言う。 「じゃ、鍋の残りで雑炊するか」 その言葉に反応したのは少女。 「は?なにいってんの締めはうどんでしょ?」 先程までの暖かい空気が、一瞬にして氷点下である。 「「……」」 青年と少女、無言で睨み合って意思を交わしている。と思うほどに長い時間の戦いだった。 雑炊だ、うどんだ、雑炊だ、うどんだ。 そして、 「くらげちゃんっ!“なみのり”!」 「ハクっ!“なみのり”!」 二人はそれぞれのパートナーに、殴られた。 ~~あとがき~~ 【れい】 ずいぶん長らくお待たせいたしました。え?待ってない? ひなちゃんとの邂逅、それとちぇぇぇぇぇぇん!! 交互に書いていたのでいろいろとごっちゃごちゃになって申し訳ないところ... 【ひな】 なんかずいぶん時間かかったね… 明らかにわたしの文が足引っ張ってるが気にしない方向で(ぁ ここまで読んでくれてありがとうだぜ!
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貴方もやきとりにされに来たんですか? 物好きなひとですねぇ フシギダネのなやみごと 1スレ470(小ネタ) 1スレ499 あぁまぁどぴじょっと~らすともえもん~ 1スレ810(小ネタ) せわやきアーボ 2スレ39 2スレ991(小ネタ) 尻振りブースター 3スレ891 5スレ180 5スレ699 5スレ725 5スレ791 突発的短編連作シリーズ『それゆけ!やきとりさん!』 ネーミングセンスの壊滅したマスターと、それにジャイアントスイングされる鳥萌えもんのお話。 第一回命名編 第二回疑惑編 第三回露見編 第四回新たなる犠牲者編 第五回遭難編 第六回ニビ到着編 落描人氏より投稿絵 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 落描人氏より投稿絵 その2 blankimgプラグインエラー:ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 上記の画像は縮小表示されております。クリックすると原寸大が別ページで表示されます。 感想等にぜひお使い下さい。 テストだお -- ぺる (2007-12-29 00 12 59) テストなんだじぇ☆ミ -- CAPRI#Slime (2007-12-29 00 32 28) 早くそのお尻ふりふりブースターをこっちによこすんだ -- 名無しさん (2008-03-29 21 55 22) ピジョットのチャイナを想像して鼻血が出そう -- 名無しさん (2011-05-22 01 53 31) 名前 コメント
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「…ん」 目を覚ますと、突きぬけんばかりの青空が視界いっぱいに拡がっていた。 …どうやら横になっているらしい。 「よっ、こいしょ」 うめきながら体を起こす。 70を超えるとさすがに体も軋…まない。 「…え?」 上半身を腹筋で引き起こす。五年くらい前からできなくなってきていたことだが、全く問題なし。 ついでに身体を見ると…妙に懐かしいカッコしてんな俺、年甲斐もなく。 (…いや、違う) よく見れば、年と比例して増えていた手の皺が全くない。 顔や体も触れてみるが、筋肉の量や肌の張りが明らかにおかしい。 「…年甲斐もないのはむしろ俺の中身ってか」 頭も妙にすっきりしている…どうやら俺は、昔ジムリーダーを始めたころの姿らしい。 …姿も、肉体も、頭も。 しかしこの頭の中身の記憶は、俺の七十数年間の年月をきっちりと記憶している。 「…どういうことだ?」 * * * …俺の旅が終わったのは、もう50年は前の話だ。 ミュウツーを倒し、一応は自分の復讐にもケリをつけ、ジムリーダーとしての地位につき、 旅が終わってからも、それまで以上にいろいろなことをやってきた。 バカなこともいっぱいやった。 死にそうになった事も一度や二度ではなかった。 苦しい事、悲しい事もたくさんあった。 とんでもない事ばかりあった気がする。 思えば生きていたのが奇跡なくらいに。 だけど、それは悪くなかった。 …何より、あいつらと過ごす時間は楽しかった。 数人を除いて、もういない仲間たち。萌えもんの寿命は千差万別だが… 俺の仲間達のほとんどは、その過酷すぎる戦いゆえに俺より早く逝ってしまった。 …誰一人、そのことを後悔も、原因である俺を責めることもせずに。 そして、俺も静かに山の中で孫や孤児達を育てながら生き延び、やがてそいつらに看取られて… あるいは、それ以外の死に方で、皆の後を追う。…それでいいと心から思う。 …なのに。 「花畑とはふざけてるな、畜生」 一瞬、本気でお迎えが来たかと思ったが、それにしては何かおかしい。 というか椅子に座ったまま往生とかどこの漫画だよ? 俺の周囲は、見渡す限り花畑だった。 様々な花が咲き乱れる、穏やかな空間。 「…こんな状況でなければ最高なんだがな…」 ぽつん、と。広い花畑の中央に立っている俺。 どうしたものかなぁ、などと考えていると。 「マスター!」 …背後から声がした。忘れようのない、懐かしい声。 振り返ると、そこにはやっぱり…あいつがいた。 水色の髪に、海のような蒼い瞳。 今の俺の横にいた時の―― 「…シャワーズ」 「はい!」 ぱたぱた、と花を散らさないようにゆっくりと走ってくる。 「お前、どうしてここに…というか、何で俺もお前も若い頃の…」 「そんなの決まってますよ」 とても久しぶりなシャワーズの笑顔に、俺は心臓が高鳴るのを抑えられなかった。 「ここが夢だからです♪」 「…は?」 「ここは現実ではなく、マスターの夢なんですよ。…あなたの望む世界なんです」 「…なるほど」 俺は頷く。…そういう事か。 「ついでに、もう一つ聞いていいか?」 「なんでしょう?」 この仮説が正しければ…俺がなぜ夢を見ているのかが分かるかもしれない…! 息を吸い込み、俺は問いかける。 「…なぜお前はシャワーズに化けた?」 「え?」 「馬鹿にしてもらっちゃ困るな。こちとらあいつが寿命迎えるまで一緒にいたんだ、見破れないわけないだろう」 「………………ふふ」 にやり、と。本物ならあり得ないような顔で、シャワーズの贋者は嗤って見せた。 「さすが、伝説を残したトレーナー。私の変身があっという間に見破られるなんて」 「…誰だお前は。俺をどうするつもりだ?」 「それは貴方が知っているんじゃないかしら? 老人をわざわざ夢の中に連れ込んだりするくらいの価値があるもの…」 「…なるほどな」 …俺の持ってるアレを狙いに来たか…どこから情報が漏れたのやら。隠してないけど。 「だが…そう簡単に教えると思うか?」 「あなたが教えてくれれば…私もいろいろと対価を用意するわ。 たとえば、永遠に覚めない最高の夢、とか」 「却下だ。どこまで行っても夢じゃつまらん」 「そう。…じゃあ、この姿のまま貴方を痛めつけて、吐かせちゃいましょうか。 便利ね、このカッコ。ずいぶん戦い慣れしてる」 …こいつはシャワーズじゃない。分かっていても、若干気が乗らない。 そもそも生身で萌えもんと渡りあうのは相当辛いんだよな…シャワーズみたいな特殊型だと特に。 フライゴンやライチュウみたいな殴ったり蹴ったりとかならまだやれるんだが。 「…一つ聞きたい」 「何かしら?」 「ここは本当に俺の夢の中なのか?」 「そうよ。私の…ダークライの力であなたをここに閉じ込めて…ちょっと他の要素も混ぜ込んでるわ。 そっちは別の仲間の能力だけど」 「なるほど」 「…質問は終わり?…じゃあ…殺さない程度に痛い思いしてもらおうかしら」 「…なめんなよ」 先ほどから腰に感じている感触。おぼろげではあったが、先ほどの会話でその感触は確信に変わった。 かちり、という小さな音とともにそれは手に収まる。しっかりと利き手で握って、突き出すように構えた。 「!?」 「ひとつ世の中の法則というやつを教えてやろう。 偽物とばれた偽物はな、必ず本物に叩き潰されるっていうジンクスがあんだよ」 ここが夢だというのなら、俺が望む世界だというのなら―― 「その姿をとったこと、後で後悔するんだな」 ――その中に、お前がいないなんて事は絶対にありえない! 「出て来い、シャワーズ!」 「…えーと、マスター」 「何だ?」 「あれは誰でしょう?どこかでみた覚えがあるんですけど」 「鏡があればすぐにわかると思うんだが…今持ってなくてな」 うん、夢の中でも変わってないなこいつ。相変わらず可愛いわ。 「…つまり、あれは私の偽物ですか?」 「そういうことだ。…悪いが他のボールがなかったんだ、おまえに頼るしかない」 「それは全然いいんですけど…自分と戦うなんて初めてですから」 「そこは俺に任せろ。ずっとお前のトレーナーやってたんだ、それくらいはどうにかする。 …行くぞ、シャワーズ!」 「はい!」 そう。俺達が一緒なら敵なんてない、なんだってできる。 あのころも、今も。ずっとそう思っていたし、事実なんだってできた。 だから、きっと今も、このふざけた夢の中でも――― 「とにかく、水タイプの技じゃ牽制にしかならん。作戦は二つ。 近距離戦とフェイクだ、やるぞ!」 「はいっ!」 ――俺達は、絶対に負けない。 「あーあ、そんな反則技予想外だわ。…でも、ちょっとだけ遊んであげる」 偽物のシャワーズ――ダークライというらしい――は、よく見ると影のような黒いオーラをまとっている。 対比しなければ分からないものだったが、逆にいえば今ははっきりとわかるということだ。 「じゃあ…小手調べと行こうかしら」 ダークライ・シャワーズの体から放たれたのは…冷凍ビームか! 即座にシャワーズが水の壁を展開する。凍りついた壁を足場に跳躍し、シャワーズが空中へと飛翔する。 「シャワーズ、なみのり!」 「了解!」 一瞬で放たれた大波がダークライへと襲いかかるが、相手は動かない。 …やはり、シャワーズの特性もコピーしているということか。 水タイプの技は、シャワーズの特性である貯水で無効化される。 相手もシャワーズをコピーしているなら通用しないのは百も承知だが、それならそれで使いようがある! 「…水タイプの技が私に効かない…ってことぐらい、あなたなら知ってると思ったんだけど?」 「知ってる上でそれを使いこなすのが、一流のトレーナーって奴なんだよ! やれ、シャワーズ!」 「はいっ!!」 大波がD・シャワーズを覆い尽くす瞬間――波が、そこで静止した。 「な―――」 「叩き潰せ、アイアンテール!」 凍りついた波を打ち砕き、鋼の一撃が落下の衝撃とともに打ち下ろされる! なみのりで放った波をふぶきで瞬時に凍らせ、相手の視界をふさいだ上でアイアンテールで氷ごと相手を打ち砕く。 かつて水タイプの的に挑む際に使った戦術の焼き直しではあるが、充分すぎる威力だ。 だが、命中の手ごたえはない。…ダークライの姿も見えない。 声だけが、花畑の空間にスピーカーか何かの用に響き渡る。 「ふ…ふふふ、さすがに『2対1』だとこの状態じゃ厳しいわね。 いいわ、今はあなたとシャワーズの絆に免じて退いてあげる…また夢の奥で待ってるわ。 ここから出たいなら、がんばって私のところまでやってきてね?」 「………」 …逃げたか。 「…逃げられましたね」 「気にするな…よくやってくれた。…久しぶりだな、シャワーズ」 「はい」 花畑で向かい合う。…俺は、こみ上げる何かを抑えきれずにシャワーズに手を伸ばし、思い切り抱きしめていた。 「え、ちょ…マスター!?」 「…悪い、ホントはこういうことしてる場合じゃないって分かってるんだ…」 夢の中だというのなら、これは幻想。目がさめれば、俺はまた一人なのだろう。 だが、それでも構わない。どんな形でも、俺はずっと―― 「…会いたかった」 「…はい」 「5年の間ずっと…お前がいなくて寂しかった」 「…はい!」 ずっと、お前だけを求めていたんだ。たぶん、夢から覚めても、死ぬまでずっと求めている。 「ここがどこでも構わない…お前にまた会えて嬉しいんだ」 「…はい、私もです…マスター」 だから、もう少しだけ。 もう少しだけ、このままお前を抱いたままにさせてくれ。
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ここでは皆さんのss内に登場するトレーナーなどのキャラクター(萌えもんを含まない)についてまとめています。 自分のキャラも入れたい!という方は遠慮なく追加編集してみてください。 作成用テンプレート(あくまで仮のものですので、これに沿って書く必要はありません。 キャラクター名 作者: ssの作者名を書きましょう。 年齢: キャラの年齢を書きましょう。 性別: キャラの性別を書きましょう。「男の娘」とかもありだ! 職業: トレーナーとかジムリーダーとか。 手持ち萌えもん: 手持ちを並べてみましょう。 解説: 性格や過去、技能などを。 その他: ss内外のいろんな裏話とか… 例 クリム (通称ゴーグル) 作者:ストーム7 年齢:17⇒20 性別:男 職業:萌えもんトレーナー⇒トキワジムジムリーダー 手持ち萌えもん:シャワーズ・フシギバナ・フーディン・ライチュウ・キュウコン・プテラ・(フライゴン) 解説:ロケット団(以下R団)を非常に憎悪している萌えもんトレーナー。 彼の本来の両親はR団の幹部だったが、息子を置き去りにして家に火をつけて逃げたという過去がある。 その後、彼は義父に拾われ、その家族の愛に支えられながら訓練を積んできた。 しかし、復讐の念が彼の顔を険しくているためか、結構怖がられがち。中身は割といい奴。 トレーナーとしての才覚も持ち、主に作戦立案能力に長ける。実はいろいろ高スペック。 のちにトキワジムジムリーダーとなっている。 その他:作外での呼称は『ゴーグル』(彼が愛用している超高性能ゴーグルから)。 ss内の多すぎるR-18フラグから、一部の間では色情魔というイメージがついている。作中ではそんな事はない…はず。 手持ちの萌えもんや挙句の果てには他の方のssのキャラにまで手を出したとか出してないとか。 れい 作者:零 年齢:18 性別:男 職業:トレーナー…だけどあえて旅人、と。 手持ち萌えもん:ハク(ハクリュー)、むぅちゃん(ムウマージ)、わたぽん(ワタッコ) ※増加予定 解説:Ray Side Story...の主人公。 過去はそのうち外伝かなにかで語られることもなきにしもあらず。 まぁ名前を見てもらえばわかると思いますが、私です。でもモデルではありません。 基本的にノリのいい青年。 だが、やるべきこと、しなければならないこと、場面場面でちゃんとわかる。頭の回転が良い。 そうならなければ生きてこれない過去もある。 手持ちもえもんとの絆は強い。 その他:どM、とかいう裏設定もあるが、あくまでも『裏』、いつのまにかどSに(ry とりあえずこんな感じ、編集余地大いにあり。 ひな 作者:ひな氏 年齢:18 性別:(少)女 職業:家出人 手持ち萌えもん:ドククラゲ、マグカルゴ、リーシャン、エアームド 解説:どっからどうみても少女にしか見えない18歳。 天真爛漫天衣無縫…か…? サカキに惨敗したことで、強くなりたいと決意した。 通称アッキーという父を持つ、昔チャンピオンだったらしいとかなんとか。 その他: ( ゚∀゚)o彡゜ようじょ!ようじょ!つるぺたようじょ! ミツキ (通称みぃ) 作者:ストーム7 年齢:16 性別:♂(…なのか?) 職業:萌えもんトレーナー(トキワジム所属) 手持ち萌えもん:クロバット・ミカルゲ・ドンファン(のちに追加あり) 解説:ゴーグルの義弟。記憶喪失でシンオウ地方の道路につったっていた所を義父に拾われる。 外見は細身の美少女にしか見えない。性格や声も女の子のようだが、れっきとした男。 トレーナーとしてはまだまだ未熟ではあるが、今後が期待されているようだ。 義兄とは違ったカリスマ性のようなものを持ち、兄弟そろって萌えもんを惹きつける。 仲間たちからよく女物の服を着せられているが、別に抵抗なく着こなしてしまう変な子。 その他:『ゴーグル』と異なり、『みぃ』は作中作外両方で使用される呼称。 見た目も性格もほぼ女の子なので、作者も意図せずそう書いてしまうらしい。 一部ではゴーグル×みぃという小ネタがあるとかなんとか。 アキラ 作者:曹長 年齢:18歳 性別:男 職業:萌えもんトレーナー→トキワシティジムトレーナー→シオンタウンジムリーダー 手持ち萌えもん:メリィ(デンリュウ♀)・デル(ヘルガー♀)・ホウ(ヨルノズク♀)・ゲン(ゲンガー♂)・サイホ(サイドン♀) 控え萌えもん:ノッサ(キノガッサ♂)・ユキメ(ユキメノコ♀)・スイクン 解説:萌えもんマスターを目指してカントーを旅している青年。 性格は基本的に温厚で優柔不断。ただしホウの悪戯へのお仕置きには容赦が無い。 ジョウト出身で、一応ジョウトリーグのバッジは全部持っているが、 リーグで敗退したため、武者修行の意味も兼ねてカントーに来た。 旅を終えた後は一時トキワジムに所属、後にシオンタウンに設立された非公式ジムのリーダーに就任する。 その他:メリィ、デル共に体つきが幼いため、ロリコン疑惑がかかっている。 が、本人は全く気にした様子が無い。 称号:鈍感マイペースなロリコンマスター(マテ 萌えもん界の光源氏(200の人より) タイチ 作者:200のひと 年齢:非公開、現在のところ二十歳を超えている事しかわかっていない 性別:男 職業:萌えもんトレーナー 手持ち萌えもん:リザード、ピカチュウ、ユンゲラー、シャワーズ、コラッタ(ボックスンメンバー) 解説:カントーを旅している青年。 マサラタウン出身。オーキド博士とは知り合い。 歳は二十歳を超えているのに、その見た目はどう見ても十代。 そのため、色々と苦労をしているらしいが、本人曰く「もうとっくに慣れた」 十年前も図鑑完成のためにトレーナーとして旅をしていた……らしい。 200のひとの○○○とのインタビューのメモより その他:ここから先は物語の核心に触れるおそれがありますので、閲覧できません。 優人(ゆうと) 作者:TANA 年齢:28(旅立ち時23) 性別:男 職業:萌えもんトレーナー兼カメラマン 手持ち萌えもん:バルキー3姉妹(ハルル・ルファ・キール)フシギダネ(テリア)色違いハクリュー(セイリュー) 解説: 萌えもんの写真取りながらカントーを旅している青年 争いや戦いを好まないが、萌えもん達に稽古をつけ 11年前のある事件のきっかけに萌えもんを家族同然に扱うようになり 萌えもんを駒のように扱うやからが許せないと思っている スキル:愛情 魅力 説得 料理 護身術 神速 鈍感
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神様。なんで貴方はこんな仕打ちを。 「ええい、そこをどけい! 貴様は海の底で引きこもっているのがお似合いじゃ!」 「そちらこそ、馬鹿みたいに空を飛びまわっていらしたらどうなんです」 ああ、いや、ある意味神様はこいつらなのか。 「ご主人さまも困っていますよ」 「貴様のせいじゃろう! さ、はよう渦巻島に帰らんかい!」 海の神と、虹の神。 「何を言っているんです。私は何もしていませんよ。あなたがぎゃあぎゃあ騒ぐからご主人さまは困っているんです」 「貴様が帰ればいくらでも静かにするわい! さ、主。あんな奴放っておいてわらわとともに熱い夜を……」 ……だれでもいい、愚痴を言わせてくれ。 「呆れましたね。品性というものが欠如しているのではないですか、貴方」 「貴様はずいぶんとお堅いのう。女が男をモノにするのは昔から閨と相場が決まっておるじゃろうに」 なぜ、俺がルギアとホウホウに挟まれてなきゃならないんだと。 事の始まりは、俺がロケット団なんぞにかかわったからだろう。 詳しくは省くとして、あいつらはこのジョウトの2大伝説、ルギアとホウホウをどうにかしてとっ捕まえたらしい。 んでそいつらをダーク萌えもん化しようとしていたところに俺がタイミングよく遭遇。 仮にもそんな場面に遭遇できるだけのスペックを誇る俺は当然の如く彼女らを救出したわけだ。 その結果が先ほどの場面というわけだ。 正直、どうしよう。 「主、はようあやつを渦巻島までたたき返しておくれ。うるさくて奉仕などできたものではない」 「私からもお願いします。早くこの女をカネの塔にでも放置してきてください」 カネの塔ってあれか、あの焼けた塔か。 「んむぅ、放置プレイか。それも悪くはないかもしれんが、やはりここはわらわが攻めていきたいところじゃ」 「ご主事様、早々にご決断を。もはや手の施しようがありません」 ……どうしよう。 「ええい、優柔不断じゃのう。あのときの大胆さはどこへいったのじゃ。わらわをして鼓動が高鳴るほどの……」 「なにか誤解を招きそうな表現ですね。ご主人様はあなたに迫ったことはないはずですが」 「むふふ、それは貴様がそういう下心があるからそう聞こえるのじゃ。わらわは真実、主の雄姿にほれこんだのじゃぞ」 「……そんな、いや、まさか、私がそのような破廉恥な……!」 放っておくとどんどん変な方向に話が進んで行きそうだけど、どうやって修正しよう。 「むふふ、ここはひとつ、そちらの方面で主に決めてもらおうではないか」 「そ、そちら……で……?」 うん、とりあえずぶっつけで修正していこうこれ以上は間違いなく手遅れだ。 「はいストップ、ホウオウはルギアをそっちに引きずり込まない。ルギアも正気にもどってよ。 君までホウオウみたいになったら僕、精神的過労で倒れちゃうよ」 「主……それではまるでわらわがただの厄介ものではないか……!」 「事実厄介ものでしょう貴方は。──ご主人様、失礼しました。あまりのストレスに錯乱していたようです」 まったく、非常に疲れるなぁ。この2人の相手は。 「もういっそ2人で仲良く百合ん百合んしてなよ」 「──────!?!?!?!?」 「……ふむふむ。主はそちらの気があるようじゃの……まぁわらわとしては主が喜ぶならば、 そのような茶番劇を演じることもやぶさかではないのじゃが……」 ほら、何の気なしにいった一言すらこんな風におおごとになりかねない。 「いやルギアはいやがってるでしょ。無理やりやらせるような鬼じゃないよ僕は」 もう、疲れた。眠りたい。 「とりあえず、僕はもう眠る。喧嘩するならするで誰にも迷惑かけないように」 この判断は、間違っていただろうか。 僕は、後にそう思うなどと微塵も思わずに言い放って、本当に眠った。 「ご主人様、起きてください……」 「主、仮にも少女の誘いじゃぞ。起きぬか」 話題が変わるが、ヒトというものは90分の整数倍の睡眠時間だと気持ちよく起きられるらしい。 聞いた話だし、うろ覚えだから真実のほどはわからないが、それにあてはめれば間違いなく、 中途半端な時間に起こされたであろうほど俺の寝覚めは悪かった。 前置きが多少長が、本題に移るとだな。 「……その、どうでしょうか」 「わらわとこやつ、どちらの体が魅力的かえ?」 そんな眠気が吹っ飛ぶような事態になったわけだ。 さすがにすべてではなかったが、本来あるはずのそれがなかったのだ。 皆まで言うまい。 「なにしてやがるお前らぁ!?」 こう絶叫するのが精いっぱいだった。 「なに、とは無粋な……やはり主の好みに合わぬ方が身を引くまでと思ったのじゃが」 「は、はやく決めてください……こちらとしても恥ずかしいんですから……」 「ならさっさと服を着ろルギア!」 なんでこう、こいつらは吹っ飛んだことするかな。 ルギアはまだ常識があると思っていたんだが、そうでもなかったようだ。 「ですが、それではご主人様がホウオウにばかり目を向けるではありませんか! 私は、そんなのは嫌です! そ、それに、公平に判断してほしいですし……」 あれ、おかしいな。こんな型破りなのにすごく可愛いぞ。 「そういうことじゃ、主。わらわとて、なにも平気で肌を見せているわけではないぞ。 主にだからこそ、見せていられるのじゃ……」 おっかしいなぁ、さっきまであんなに煩わしいと思ってたのに。 そんな尻すぼみな声で告白されちゃあ、ものすごくいとおしくなってくるじゃないすか。 「……ほれ、手を出すつもりもないのにいつまでも少女の肌を見てるでないわ」 「その、できるだけ早く結論をお願いします……」 ぼーっと見惚れてるうちに、答えをせかされてしまう。 即座に返せる答えは、 「選べない、どっちも選びたいっていうのはなし?」 こんな、中途半端なもので。 「なぁに、すぐにわらわの方が良いと証明して見せよう。それまでの間くらいならかまわん」 「……ご主人様の、お好みどおりになって見せます……!」 それでも、彼女らは受け入れてくれて。 「……ハハハ……ま、あんまりトラブルをもちこまないで頂戴ね」 だから、僕も彼女らを受け入れてしまった。 それが、僕のややこしい毎日の始まりだった。
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sweet hideout 1-2a アルティナルート -------------------------------------------------- 【???】 (いちかばちか……何か投げつけて 気を逸らした隙にこの場は逃げよう……) 俺はさっき拾った木の実を取り出して 手の中に忍ばせる。 【女の子】 「さぁ! おとなしく捕まっ……」 【???】 「今だぁっ!!」 【女の子】 「ふぎゃっ!?」 【???】 「え……? あ、あれ……? なんだ今の……?」 少女が火の粉をこっちに飛ばしてくる瞬間に コマ状の実を投げつけたら実が弾けて 女の子を包んで爆発した。 【???】 「だ、大丈夫か……?」 ぷすぷすと煙を立てながらノックダウンしてる 少女を見て、俺は恐る恐る近寄る。 【女の子】 「……きゅう~~……」 どうやらノビてるだけみたいだ。 見事に目をぐるぐる回して失神してる。 【???】 「でも……どうするかな……? 起きたら俺のことまた攻撃してきそうだし……」 かといってこの場所を離れるのも薄情な…… ----------------------------------------------------------- 【???】 「……仕方ない。この子が目を覚ますまで 少し離れた場所で様子を見ながら休むか……」 それだったら追いかけられても逃げられるし、 少なくとも下手に動き回るより この子の帰る場所には民家もあるかもしれない。 後からツケるなんてストーカーまがいなことはしたくはないけど 状況が状況なだけに手段は選んでられない。 多少心が痛むなか、俺は失神している少女からは見えない位置、 距離20メートルぐらい離れた大木まで移動し、 そのままもたれかかった。 【???】 「……さて、これからどうする……?」 突然の来訪者に、有耶無耶にされかけたけど 当初の目的はキャンプ場に戻ることだ。 あの少女をツケれば確かに民家には辿り着ける。 でも、その民家がキャンプ場から明後日の方角だとしたら? そもそも、ここが本当にキャンプ場付近の森の中か……? 倒れた場所と景色が違いすぎるから誰かに連れて来られたのか…… がさっ! 【???】 「!?」 思考を遮るように聞こえてきた草木の分ける音。 あの少女はまだ起きていない。 人か獣かの判断ができていない俺は 相手に姿が見えないよう少し位置をずらし隠れて息を殺す。 がさっがさっ! どくん、どくんと鼓動が高鳴る。 もし相手が熊でこちらに気づいていたとしたら……… 生死の危険がよぎる中で必死に平静を保とうとする。 【???】 (あと少し、あと少しで姿が見える……鬼が出るか蛇が出るか………) がさっがさがさっ!! 【???】 (……!? え……? また……女の子……?) 想像していたものとは全く異なる相手を見ることになった。 一方の女の子は草木を掻き分けながら、 何やらあちこちの木を注意深く見ている。 【女の子】 「……ふぅ、ここら辺の木々はまだ実を付けていないな…… 必要な分は獲れたけど、余裕もって帰りたいし……」 少し残念そうな溜め息をして、また木々に視線を向けだす少女。 どうやらこの子は木の実の採取に来ているようだ。 【???】 (……とりあえず、命の危険は無くなったか……? けど……あの子のあの姿……) さっきの子とはまた別な見慣れない服装や装飾品…… それに、手に付けている鉤手のようなものがとても気になった。 俺はそんな特異な少女に目を追うことに夢中になって、 自然と身を乗り出していることに気づけないでいた。 ぐぐぐ……べきっ! 【???と女の子】 「!?」 【???】 (し、しまった……小枝を……) 【女の子】 「…そこかぁっ!!」 【???】 「ひっ!?」 もたれかかっていた木の側面に、少女が付けていた鉤手が突き刺さる。 鉤手はびいぃぃぃんと高速振動しており、 もし当たったのが俺自身の体だとしたら 怪我では済まないものとなっていただろう。 【女の子】 「そこにいるのは誰!? 素直に出てきた方が身のためよ! 今のは脅しで放ったけど、今度は外さないから……!!」 物凄い剣幕、それも生死の危険からなるような表情で こちらに言い放ってくる少女。 【???】 (この子も攻撃を……!? いや……さっきの子とは違って、 自分の身を守るためにやってるように見えるけど…… でも、出会いがしろの存在にここまでするか……!?) 【女の子】 「……出てこないのね、それなら仕方ないわ……すぐ楽にして……」 【???】 「!? ま、待ってくれ! い、今出るから……そんな物騒なものを投げないでくれ……」 流石にまずいと思った俺は、 相手に言われるまますごすごと姿を晒す。 しかし、少女の表情は険しいままで、 こちらの意見に取り繕ってくれるかすら、少し怪しい。 【女の子】 「……? 貴方、もしかして雄? なんでこんなところに一人で……」 【???】 「ちょ、ちょっと待ってくれ! お、雄ってなんだよ!? そんな動物みたいな呼び方……俺は人間の男……」 じゃきぃっ!! 【???】 「うっ……!?」 【女の子】 「誰が勝手に喋っていいって言ったの? 貴方は私の問いに簡潔に答えればいいの」 首元に鉤手を突きつけられ、下手に機嫌を損ねたら 終わりということが全身に伝わってくる。 【女の子】 「もう一度聞くわ……どうして出生率の低い雄の貴方が、 一人でこんな森の奥にいるの? 答えなさい!」 【???】 「く……キャ、キャンプに来てて、 それで火を熾すための小枝を捜していたんだ……」 【???】 (くそ……本当のことを言い続けるのが無難だけど、 この子の言ってる事には疑問点が多すぎて気になってしまう……) 男の出生率が低い……? そんなことある訳…… それに雄って呼び方…… 俺は質問に答えつつ、この子の言動の一つ一つを頭の中で確認していた。 【女の子】 「……誰か仲間がいるの?」 【???】 「……ここにはいないけど、同じアルバイト仲間が……」 【女の子】 「……アルバイト?」 【???】 「て、手伝い程度の仕事をすることだよ。 今、それの慰安旅行中で……」 【女の子】 「……私の仕事、知ってる?」 【???】 「い、いや……良く分からないけど、木の実の採取をしてる……?」 次々に少女から受ける質問、 その内に彼女の目的が見えてきたような気がする。 【???】 (なんだろう……? この子、表情は崩れることなく険しいけど、 何処か怯えているような……) この質問も、俺に敵意があるかを調べているみたいだ。 【女の子】 「それじゃぁ最後の質問、貴方は何者なの? ニンゲンとか、訳の分からないことを言っていたけど、私の敵なの?」 最後の質問は、こちらが耳を疑いたくなるような内容だった。 【???】 (に、人間っていう言葉の意味を知らない!? そんな……俺は人間だし、彼女だってそうにしか見えない……) 【女の子】 「……何を黙っているの……!? 答えなさい!」 【???】 「……俺はアンタの敵じゃない。何者かなんて言われても、 只の人間と言うしかない。俺にはアンタも人間にしか見えない……」 【女の子】 「貴方……もしかして頭を強く打ったりしなかった? どうやらそのニンゲンっていうのは種族の名のようだけど、 私は萌えもんのニューラという種族よ」 【???】 「……は? もえもん? ニューラ……? そんな種族、聞いたことも……」 この子が何を言っているのか、全然理解できなかった。 初めて聞く単語、アイヌとか色々な名前の部族が 存在すると聞いたことはあるけど ここは日本、それも種族なんて聞いたこともない。 【女の子】 「……本当に頭を打ってるみたいね。 貴方だって私から見たらそのニンゲンには見えないわ」 【女の子】 「グラエナ種ってことだけは、 その黒髪と耳の形状で分かるけど……」 少女は俺の首元から鉤手を下ろすと、 片方の手で頭を押さえながら溜め息混じりに話してくる。 【???】 「え? グラエナ……? ……耳………?」 俺は人間ということを否定されたことより、 自分も聞き慣れない種族と見られていることの方に驚いていた。 困惑していた俺は 慌てて自分の顔を触って確かめてみる。 【???】 「……いつもの場所に耳が無い……? そ、それどころか、 この犬みたいな触り心地のが、本当に……俺の…………?」 先程覚醒したときに感じた体の異変、 その時には気付きもしなかったが、その耳に触れてみると くすぐったく感じ、自身の感触ということがはっきりと分かる。 【???】 「――――!!」 俺は自分に起こったことに畏怖を感じ、その場を駆け出そうとする。 狂いそうになる思考の中で浮かんだのは、あの声のことだった。 【???】 (アイツだ……! さっき気を失った時に聞こえてきた少女の声…… 俺に何かしたのもアイツしか考えられない!!) 【女の子】 「ま、待ちなさい!!」 駆け出そうとする俺を、反射的に少女の手が掴まえてくる。 【???】 「お、俺に触るな!! 俺はアンタの敵じゃないんだから 何処に行こうと勝手だろうが!」 【女の子】 「……! っこの……!!」 【???】 「!! ……ぁ……ぅ………?」 顔に響く衝撃、じんじんと熱い感触が頬に纏わり付く。 俺は何が起こったのか分からず、呆けていた。 【???】 「う……痛ぅっ………」 腕に圧迫感があり、視線を向けると 少女が怒りの表情でこちらを見ている。 その瞳はうっすらと滲んでいるように見えて…… 【女の子】 「……確かに、さっき出会ったばかりだし、 貴方を止めるのは筋違いかもしれないけど……!」 【???】 「………?」 【女の子】 「そんな乱れた心で走り回って、怪我したり迷ったらどうするの!? それを私に見過ごせって言うの!? 冗談じゃないわ!!」 【???】 「……あ……わ、悪かった……取り乱したりして………」 我に返ってみると確かにそうだ。 ここの地理に関してまったくの無知なのに、 なぜ駆け出そうとしたんだろう…… 【女の子】 「私の言葉で混乱しちゃったのなら謝るわ……」 【女の子】 「けど、貴方を困らせようとして言ったわけじゃない…… 私も貴方のことが不安だったから……聞いたのよ……」 少女は俯きながら掴んでいた腕を放す。 言葉使いも優しく、より深く聞こえ、 彼女と地面の間から雫が一つ、二つと落ちるのが見えた。 泣いている。 俺はまた自分勝手に行動して、 誰かを困らせて、泣かせてしまった…… 罪悪感が込み上げて胸を締め付ける。 でも…… 【???】 「ごめん……でも、俺もどうしようもなく不安だったんだ」 【???】 「自分が信じられないこと、それを知ったり、受けたりして…… ……縋りたかったんだ。その信じられないことの答えに……」 俺も瞳から何か込み上げてくるものを感じ、 『縋りたい』と言ったときには 崩れる様に少女の肩に手を置いていた。 少女は、初めは驚いていたが、 こちらのことを察してくれているのか そのままにしていてくれている。 【女の子】 「……………」 【???】 「俺……俺は………!」 がさがさ…… 【???と女の子】 「!?」 【青髪の女性】 「アル~、木の実集まったんか~? それやったらいつもの渓流で水浴びせぇへん?」 【???】 「……え?」 【女の子】 「ゴル……姉………?」 重い空気をぶち破るように現れた女性。 言動から察するにこの少女の知り合いのようだけど…… 【青髪の女性】 「…………」 【???】 「…………」 【女の子】 「…………」 【青髪の女性】 「……おっ邪魔しました~♪」 【???】 「へ!?」 【女の子】 「きゃあぁぁ!? ちょっと、離してぇ!!」 どんっ!! 【???】 「どわっ!?」 にっこり笑いながら不可解な言葉を発して去ってしまう女性。 俺と少女はしばらく固まっていたが、気が付いたかのように 顔を真っ赤にして少女は俺を突き飛ばして女性の後を追う。 【女の子】 「ご、ゴル姉……! すっごく勘違いしてると思うけど、 アレは全然違うんだからね! そういうのじゃないんだからね!」 【青髪の女性】 「いやぁ~アルも成長したんやな~♪ まさか仕事中に雄と逢引を楽しんでいるなんてなぁ…… あぁ~お姉ちゃん嬉しくて涙が止まらへんわ~♪」 【女の子】 「……違うって言ってるでしょおぉぉぉ!!」 ------------------------------------------------------------ TO BE CONTINUED
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アサギを仲間にしたオレとマドカは、リーグの近くまで行くために再び22番道路を歩いてるわけだが・・・。 「・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・(ニコニコ)」 「・・・・・・・・・・・・」 無言。とにかく無言なのだ。それでもなぜかマドカだけは笑顔だが。この空気の中よくニコニコできるな、こいつ。 会話のきっかけがないとか、話すことがないとかそういうわけじゃない。 単純に「会話が成り立たない」のである。 たとえばさっきも・・・。 「なぁ、アサギ」 「・・・・・・何よ」 すげぇジト目。オレ、なんかしたか? ひとまず気になってたことを聞いてみることにする。 「さっきマドカと戦闘になったとき、攻撃当たってなかっただろ? さっきはああ言ったけど本当はどっか悪いんじゃないのか?」 攻撃がかすった程度なのにいきなり倒れられたら普通そう思うだろ? 「・・・別にどこも悪くないわよ」 しかし返ってきた答えはいたって簡潔。というかむしろ突っぱねてるという感じに近い。 「じゃあなんでいきなり倒れたんだ?」 当然の疑問なのだが、その言葉にアサギの体がピクッと反応する。 あ、これはマズい。 「うるさいわね! 別に何ともないって言ってるでしょ! 女の子のことをいちいち詮索するんじゃないわよ!! ほんと最低! なんだってこんな奴に捕まっちゃったのかしら・・・」 ・・・やっぱりな。顔を真っ赤にしてまくしたてられた。そんな怒らせるようなこと言ったか? にしてもひどい言われようだな、おい。 「別におまえが嫌なら逃げていいんだぞ。オレだってむりやり連れて行くのは嫌だしな」 言ってから気づいた。アサギの顔がさらに赤くなってく。学習しねぇな、オレ。 「なっ・・・! あんたさっき言ったこともう忘れたの? 捕まえたんならちゃんと責任持ちなさいよ!」 「いや、だからな・・・」 「もー、二人とも仲よくしなきゃダメですよー」 マドカの仲裁の声がむなしく響く。というか仲よくって問題じゃないだろ、これは。 はぁ・・・ったく、どうしろってんだよ・・・。 『第二話 トレーナー復帰戦!』 とまぁ、そんなやりとりがあったわけだ。 それからはとにかく無言。しゃべればまた口論になりそうな気がするし。 オレ自身こういう空気が苦手なわけではないが、いかんせん手持ちにいきなり拒絶されてるっていう状況が何とも・・・。 マドカが笑ってるおかげでなんとか場の空気がもってる感じだが、おまえの神経はどうなってるんだマドカよ。 誰でもいい。せめてこの状況を変えてくれれば・・・。 「おーい、サイカー!」 オレの祈りが届いたのか道の向こうから名前を呼ぶ声が聞こえる。向こう側から走ってくるその姿は・・・。 「アマネ・・・」 「やっぱりサイカだったか。一日ぶりだな!」 なにが一日ぶりだ、なにが。 案の定向こうから走ってきたのはアマネだった。後ろからラピスと、おそらく手持ちのポッポが駆け寄ってくる。 ん? ポッポを見た瞬間アサギが目を丸くした気がするが・・・気のせいか? 「やっぱりお前も旅に出てくれたかー。お兄さんはうれしいぞ!」 「バカ、オレのが生まれは早いだろ」 会ってそうそう軽口とは、やっぱりこいつらしい。 それに空気も変わったし、そりゃあもう一瞬で見事に、その分については感謝しとくか。 「あー、やっぱりお前はヒトカゲにしたか。名前つけたのか?」 オレの横にちょこんと立っているマドカを見てそう聞いてくる。「やっぱり」ってのが気になるが。 「あぁ、マドカ、挨拶しな」 「はい、マドカです。よろしくお願いします」 マドカの名前を聞いた途端アマネの顔が曇る。 「『マドカ』ってお前・・・」 ん、今までが今までだし当然の反応だろうな。だからこそオレはその目をじっと見据えてやる。 決して過去を引きずってるわけじゃないというように。 「まぁ、なんだ、けじめみたいなもんだ」 「・・・なるほどな、お前がそれでいいならいいさ」 そう言って笑顔を見せる。言葉足らずでも十分伝わる、やっぱりこいつはこういうとき助かる。 「マドカちゃんっていうんだ。わたしはラピス、よろしくねー」 「うん、よろしくね、ラピスちゃん」 オレたちの横ではマドカとラピスが自己紹介をしてた。なんとも微笑ましい光景だ。 「へぇ、そっちもずいぶん懐いてるみたいだな」 「ん、そうか?」 何が根拠なのかはしらんがアマネによるとマドカはだいぶオレに懐いてくれているらしい。 さすがに最初の手持ちに嫌われちゃ話にならんしな。本当に懐いてくれているんなら、素直にうれしい。 ・・・一人問題児もいるが。 「手持ちも増えたみたいだし、一応紹介しとくか。こっちがオレの新しい手持ち、ポッポのリンだ」 「リンです。よろしくお願いしますね、サイカさん」 「あぁ、よろしくな」 ずいぶんと礼儀正しい子みたいだな。うちの誰かさんにも見習ってほしい。 「マスター、わたしも紹介してくださいよぅ!」 「んっ、そうだな! オレの可愛いラピスを紹介しないなんて罰が当たる! というわけでオレの嫁、ラピスだ!」 「はい! マスターのよめ、ラピスです!」 アホだ、アホがいる。というか分かってて「よめ」って言ってんのかラピスは・・・。 「・・・いいなぁ」 「ん? なんか言ったか、マドカ」 「い、いいいい、いえ、何も!」 気のせいか? なんかボソッと聞こえた気がしたが。 次はオレの手持ちの紹介だな。アサギの方を振り返りつつ、 「オレの方は、こいつがオニスズメのアサ・・・」 ・・・「にらみつける」覚えてたか? さっきから静かだと思ったら、アサギはリンを恐ろしい目でにらみつけていた。後ろにゴゴゴゴゴという擬音が見える気がする。 「やっぱりあんた、リン!」 「あーら、どっかで見たような顔だと思ったらアサギちゃんじゃなぁい」 あ、知り合いか? っていうか、リンの声色がさっきまでとぜんぜん違うんだが。あれか、学園ドラマでいういじめっ子のお嬢様的な。 「リン、おまえら知り合いだったのか?」 オレの疑問をアマネが代わりに問うてくれた。しかし、その解答は先にアサギの口から出る。 「そいつはあたしのライバルよ!」 「ライバルって自称じゃなぁい」 「うっさい!」 アマネとオレは顔を見合わせる。どうやら知り合いどころの騒ぎじゃなかったな。 リンの方は軽くいなしてるが、アサギの方は今にも掴み掛かりそうな勢いだ。 「あんたはいっつもいっつもいきなり現れてあたしの獲物横からかっさらっていくんだから!」 「そんなのあなたがとろいだけじゃなぁい? だいたい取られる方が悪いのよぉ」 「なんですってぇ!!」 マズい。マジでケンカになりそうだ。・・・話を変えるか。 「それはそうとなんでお前がこんなとこにいるんだ? とっくにもっと先に行ってると思ってたんだが」 自分でもかなり無理矢理だとは思うが、話の矛先をアマネに向けてみる。 「いやぁ、やっぱり久々にトレーナーやってみるとポケモン捕まえるのも楽しくてな。昨日一日かけて捕まえまくってたんだよ。で、あとはお前と同じかな」 「ってことはお前もリーグに?」 さすが親友。考えることは同じってことか。言ってしまえば原点だからな。 「そういうこと。けど今は行けないぜ」 「あ? どういうことだ?」 「昔と違って、今はバッジ持ってる奴しか通してくれないんだと。そんでオレも今引き返してきたとこなんだよ。ずいぶん厳しくなったもんだ」 そうだったのか。昔はバッジ持ってなくてもリーグまでは行けたんだがな。もちろん四天王に挑戦はできないけど。 ってことは今行っても無駄ってことか。 「どーする? お前も引き返すか?」 「ん・・・まぁ、行くだけ行ってみる。こいつらにもゴールへの道くらいは見せてやりたいしな」 「さようか。ま、それもいーだろ。それはそうと、だ。サイカ」 ぬ、こいつさっきのお返しとばかりに話を切り替えてきやがった。 しかもこのニヤケ顔は・・・何を企んでんだか。 「久しぶりにバトルしないか?」 その声ににらみ合ったままだったアサギとリンが首をグリンとこっちに向ける。 「よーし、白黒はっきりつけてやろうじゃないの!」 「いいわぁ、どっちが上か教えてあげるわよぉ!」 アマネと顔を見合わせて苦笑する。トレーナーの意志なんてあったもんじゃねぇなぁ。 「で、どーすんだ? サイカ」 「こうなった以上、しょうがないだろ。やるよ」 オレ自身も久々にバトルしてみたかったしな。なんて言ったらアマネがさらにニヤけるのでぜったい言わないが。 「サイカ! まずはあたしが行くわよ!」 「マスター! 分かってるわね!」 呼び捨てかよ。つーか仲悪いくせになんでこんなときばっかりこうも息が合うかね。 「はぁ・・・好きにしろ、アサギ」 「頼むぜ、リン!」 「アサギちゃん、頑張れー!」 「リンちゃん、負けるなー!」 こうしてオレの7年ぶりのトレーナー復帰第一戦はぐだぐだな感じで始まるのだった。 「うりゃぁぁぁぁぁぁっ!」 「ほらほらほらほらぁっ!」 目の前でアサギとリンの激しい攻防が続く。・・・トレーナーそっちのけで。 「おい、アサギ! 少しは指示を聞け!」 「リンー、もう好きにやっちまえー」 二人のポケモンは完全にヒートアップしててトレーナーの指示なんか聞きもしない。 もうアマネなんて完全にあきらめて、観戦モードじゃねぇか。 「あんたの、指示なんて、いらない、わよ!」 「あらぁ、あなたは、指示をちゃんと、聞いた方が、いいんじゃない?」 「ふん! 寝言は、寝てから、言いなさいよっ!」 これはどうしようもないな。オレもあきらめて観戦モードと行くか。 「お前はこんなんでいいのか、アマネ?」 「はは、あいつらも楽しそうだし、いいんじゃないか? お、いいぞ! そこだー!」 「お前も十分ノリノリじゃねぇか・・・。楽しそうならいい、か」 確かにライバルとか言って仲悪い割には、戦ってる二人はすごく生き生きした顔をしてる。 なるほど、競い合える相手だからこそライバルってわけか。そりゃ生き生きもするわけだ。 「それにオレもただ好き勝手やらせてるわけじゃないぜ」 「何?」 「おいおい、オレはそう簡単に勝たせはしないっての忘れたか?」 そうだ。こいつは普段の性格に反して、バトルは戦略をしっかり立てて戦う奴だった。 昔は考えなしに突っ込んでこいつの策にやられたこともよくあったな。 ということは既にリンには何か策を・・・? 「ちっ! アサギ、気をつけろ! 向こうは何か策を持ってる! いったん落ち着け!」 「あんたの、指示なんて、いらないって、言ったでしょ!」 「せっかくの、指示なんだから、聞いたら、どうかしらぁ!」 ダメだ、まったく聞きゃしねぇ。ならせめて向こうの策を考えないと・・・。 「そろそろ勝負を決めてあげるわぁ! 「かぜおこし」ぃ!」 リンの翼で巻き起こった風がアサギを襲う! しかし距離が遠すぎたのか、風はアサギに近づくにつれ徐々に弱くなっていく。 「そんなものっ!」 その風に向かってアサギが一気に突っ込む。弱くなった風を突き抜けて一気に距離を詰める気か。 しかし、なんでまたあんな距離で「かぜおこし」なんか撃つ? あれじゃ届く前に風が・・・。 いや、まさか、わざと弱くしたのか!? 「アサギ、よけろ!」 「大丈夫よ、こんなもん! てやぁぁぁぁぁぁっ!!」 オレの声もむなしく、顔の前に手を交差させアサギは風に突っ込んでいく。しかし―― 「それよっ! 「すなかけ」ぇっ!」 「えっ・・・きゃあっ!」 風を突き抜け、手の防御を解いた瞬間を「すなかけ」で狙い撃ちにされる。 やっぱり狙いはこれか。「かぜおこし」はあくまでおとり。本命はこっちの目をつぶすことだったか。 「くっ、目が・・・」 「残念だったわねぇ。アサギちゃん?」 「よーし、リン、ナイスだ! 一気に決めちまえ!」 リンが距離をつめて「たいあたり」をしかけてくる。まずい、こんな状況でくらったら・・・! 「アサギ、右だ! 右によけろ!」 「え? み、右? 右ってどっち・・・」 「無駄だぜサイカ! 目の見えない状況のポケモンに指示なんて通じないさ」 アサギが戸惑ってる隙にリンが迫る! 「終わりよぉっ!」 「っ、きゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」 悲鳴とともにアサギの体が大きく吹き飛ばされた。 「大丈夫か、アサギ!」 「アサギちゃん!」 吹き飛ばされたアサギに急いで駆け寄る。大きく肩で息をしているが傷はそんなにひどくないみたいだな。 戦闘はもう無理だが、しばらく休んでれば回復するだろ。 「・・・なさい」 アサギが何かを言いたそうにしている。傷が痛むのかその声はだいぶ小さい。 「どうした、どこか痛むのか?」 「ごめん・・・なさい」 聞こえてきたのはまさかの謝罪の言葉だった。よく見てみると、アサギの目は涙でいっぱいだった。 やっぱり傷が痛むのかと思ったがどうやらそうではないらしい。 「っく、負け、ちゃって、ごめんなさい・・・ひっく、指示、ちゃんと、聞か、なくて・・・ごめん、なさい・・・」 こいつ・・・。とんだ跳ねっかえりかと思えば。 オレが手を差し出すと、アサギは怒られると思ったのかビクッと身を固くする。 まったくこんなんじゃ、トレーナー失格だよな。 「・・・・・・あ」 軽く頭をなでてやると、アサギは目を丸くしてオレを見上げる。 「大丈夫だから、今は休んでろ」 「・・・・・・うん」 光がアサギを包みボールに吸い込まれていく。 オレは、もっとこいつらのことを知ってやらないとな。そうでなきゃ信頼されるわけがない。 次は勝とうな、アサギ。 「おーい、まだかー」 アマネの急かす声が聞こえる。オレとマドカはうなずき合い、振り向く。 「あぁ、行くぞ、マドカ!」 「任せてください! アサギちゃんの敵討ちです!」 アマネの笑みが余裕とは別のものに変わる。あれは昔と同じライバルの顔。 まだ勝負は決まってない!
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『三犬無双』 安定重視のスイクン 子役重視のエンテイ 一発逆転のライコウ 三匹のキャラからお好みで勝負! ビッグボーナス終了時にはRT三犬ラッシュに突入。 1Gにつき2枚の増加が見込める超ハイスペックマシン。 バトルボーナスではボス128を倒し、捕らわれの姫を助け出せ。 姫は『はずれ・カブト・ホウオウ』の三人。 ホウオウならば無限三犬ラッシュに突入だ! 『機動戦士ポリゴンZ』 昔懐かしいアニメがついにスロット化。 ポリゴンZを乗りこなし敵の萌えっこスーツを破壊せよ。 黒いらしい三連星などなつかしのキャラが登場。 もちろんRTも搭載。 77G完走型。 『ドリパラ』 今度のオニドリルは様々な衣装に着替えます。 水着、チャイナ服、ナース服、メイド服などなど。 もちろん、いつもの衣装であるディーラー服も…。 各ステージで対決に勝利すればボーナス。 いつものカジノステージは激アツ! さらに対戦相手でライバル『ピジョット』が出てくると…。 一回の出玉は半端じゃない! ボーナス終了時はドリルタイムに突入するぞ! ドリルタイム中は子役をすべてナビしてくれるぞ! 『赤ポニータ・青ポニータ』 人気の花火職人ポニータがついに5号機になって帰ってきた。 一発でかいのを狙う人には赤 ループRTの連荘を狙うなら青がお勧めだ! 赤の出玉は半端じゃない、5号機一番の出玉を誇る 青のループ率は変動性、最高95%を狙え! 『伝説の萌え』 人気の高かった萌えモンがここに終結! 皆の嫁がこの機種に。 ボーナス確立はなんと合算1/100 さらにボーナス終了時には萌え修行に突入! 特殊リプレイを引けばRTに突入だ! 目指せループ大爆連! 『伝説の勝負師バリヤード』 あの人気コミックがついにスロットで登場。 バリヤードが様々な人物とギャンブルで勝負していくぞ。 もちろん勝負に勝てばボーナスだ! ボーナス終了後は念力チャンスに突入。 チェリーを外せば1G2枚増加のRTエスパータイムに突入だ! 「マーコンナカンジノメールガトドイテルゼ。」 ポリゴン2はタマムシスロットから届いたメールを声に出して聞かせてくれた。 「うおおおおぉぉぉ!!!超行きたい!!!!」 俺は吼えた。 が 「アキラメロッテ、イマイルノハ『トキワノモリ』ダロ?」 当然、トキワの森は迷路のような森だ。 すぐさま抜けられるわけではない。 「ソレニスロットハヤメタンダロ?」 「一回ぐらい打ちたいんだよ。 わかんないかな、この気持ち…。」 「ワカンネーヨ。」 「スロットォォォ!!!!!!」 その日、トキワの森に変な声が響き渡ったそうな。 これが元でトキワの森には奇声を上げるナニカが出没すると言う噂が立つのだがソレはまた別のお話。